2010年4月28日水曜日

心理学セミナー

昨日、大学で開かれた心理学の公開セミナーに出てみました。タイトルは「紅茶を淹れるのは簡単ではない(Making tea is not a piece of cake)」で、人が日常生活を営むために必要な記憶がテーマでした。なぜこのセミナーに出たかと言うと、もちろん内容に興味を持ったからですが、最初にタイトルにひかれたからです・・(「piece of cake」は「簡単な」という意味ですが、紅茶とケーキという言葉からイギリスの紅茶やお菓子についてのセミナーかと思ったのです)。

内容は、講演した先生が取り組んでいる3つの研究プロジェクトの紹介で、そのうちのひとつは、認知症によって、紅茶を淹れるという作業がどんなふうに忘れられていくのかという研究でした。紅茶を例にしているところがイギリスらしいです。数年にわたって観察したところ、認知症の人には、紅茶を淹れるのにあまり重要ではない作業(例えば砂糖を加えること)から忘れていき、不可欠な作業(例えばお湯を沸かすこと)は最後まで覚えている傾向があることがわかったそうです。

また、ある被験者の映像を見たのですが、その人は紅茶を淹れたあと、砂糖を加えるところまでは完璧なのですが、最後にミルクを入れるという作業を忘れてしまっているため、砂糖を加えてかきまぜる作業を延々と繰り返していました。ただし、スプーンを正しく使ってかきまぜること、砂糖の容器のふたを閉めること・・など、ひとつひとつの作業はきちんと行われていました。問題はそれらをうまくつなげる記憶が欠けてしまったことでした。これは事故などで脳に障害を負った人たちの記憶の失われ方とは異なるようです。

公開セミナーだったせいか、説明がわかりやすく、専門用語を知らなくてもだいたい内容がわかりました。それに、全く違う分野の研究について聴くと、自分の研究についても、いったん距離をおいて、客観的に見られるような気もします。せっかくいろいろな分野の研究が行われている大学にいるので、また他のセミナーにも出てみたいと思います。

2010年4月26日月曜日

ウォーキング

昨日、IDSのガバナンス・チームのM先生が企画したサウス・ダウンズ(South Downs)のウォーキングに参加してきました。ブライトンの東にあるシーフォード駅(Seaford Station)に集合して、海沿いの丘陵を歩き、途中セブン・シスターズのあたりで内陸の方に北上して、アルフリストン(Alfriston)という小さな村まで行きました。そこでクリーム・ティー(イギリスの伝統的な紅茶とスコーンのセット)をして、バスでブライトンまで帰ってきました。計11キロくらい。M先生と何人かはさらに歩き続けていましたが・・。

2008年11月にもM先生のウォーキングに参加したのですが、そのときは上り下りの連続でみんなについていくのが大変で、途中で雨が降ったこともあり、帰ってきてから風邪をひきましたが、今回は平らな道が多かったので、最後まで気持ちよく歩くことができました。

左上の写真は、セブン・シスターズです。この角度からセブン・シスターズを見たのは初めてでしたが、靄がかかっていて、ちょっと幻想的でした。暖かくなったので、また是非ウォーキングに行きたいと思います。

2010年4月18日日曜日

引越し

ブライトンでは、春らしい暖かいお天気が続いています。いろいろな花が咲いているのですが、黄色いラッパスイセン(右の写真)が特にたくさん咲いています。ラッパスイセンが春の象徴の花なのかもしれません。今日は特に暖かくて日差しも強く、年に一度のブライトン・マラソンが行われたのですが、走り終えたばかりの人たちを見て、ひとあし先に夏のような気分になりました。

さて、先週金曜に引っ越しました。ケンプタウン(Kemptown)の家の地下の部屋から、ハノーバー(Hanover)にある大学の先生のお家の一部屋へ。ハノーバーは、ロイヤル・パビリオンの北東にある住宅街です。急な坂道になっていて、このお家は坂の上にあるので、家に帰るたびにいい運動になります。ケンプタウンのお家からサセックス大学までは、バスを1度乗り換えて45分くらいかかりましたが、これからはバス1本で行けます。昨日スワヒリ語のレッスンがあって、大学に行きましたが、最寄のバス停から15分で着きました。近い!

早速、部屋に必要な小物の買い物をしています。いくつもお店を回って選ぶのが楽しいです。今日はノース・レーン(North Laine)にある骨董品屋さんで、ガラスのティーポットを買ってしまいました。本当はごみ箱を買おうと思ったんですけど・・。この部屋には棚がたくさんあるので、棚に何を置こうか、暖炉があるので、暖炉周りに何を置こうかなど、考えているだけで楽しいです。

明日から夏学期が始まります。今学期は比較政治の授業を取ることにしましたし、リサーチ・アウトライン(研究概要)もまとめていかなければいけません。気持ちを新たにがんばります。

2010年4月13日火曜日

文化の下の文化

2月からタンザニア人の方からスワヒリ語を教えてもらっています。まだ基礎レベルなのですが、先生のIがとってもいい方なので、スワヒリ語の時間がいつも楽しみです。

Iからは、いろいろ興味深い話を聞きます。先日の授業では、はっきり言ってください、わかるように言ってくださいよ、という意味の「セマ ワーズィ(Sema wazi)」という例文から発展して、タンザニアの民族ごとに異なるコミュニケーションの仕方の話を教えてもらいました。タンザニアは120以上の民族から成る他民族国家なのですが、それぞれの民族に哲学があって、その哲学の違いによって、コミュニケーションの仕方が少しずつ異なるのだそうです。

彼女の出身のへへ族(Wahehe)では、言葉にはせずに、行動で意思疎通する伝統があるそうです。例えば急に家にお客さんが来た時、歓迎の意をこめてご飯を作って出すのですが、その際に「ご飯を食べてきましたか?何か作りましょうか?」と聞くのは失礼になるそうです。というのは、そう質問したら、相手は「いや結構です」と断る場合が多いので、その質問をすること自体が、相手にご飯を出したくないという意味を伝えることになってしまうとか。そこで、空腹かどうか聞かずにご飯を出します。

お客さんの方は、もしお腹がすいていなかったとしても、「ご飯を食べてきたから結構です」とは言わずに、食べられるだけ食べます。そうすると、「お腹は空いていなかったけれど、有難く頂戴しました」という意味が伝わることになり、それでお互いの関係が保たれるのだそうです。

今は伝統も変わってきているので、そこまで厳密ではないようですが、言葉を介さないコミュニケーションの仕方は、他の民族の人たちから見るとわかりにくく、混乱を招くこともあります。そこで、民族間のコミュニケーションの違いによる混乱を防ぐという意味でも、誤解のないようにはっきり言ってくださいね(Sema wazi)という冒頭の例文が使われます。

タンザニア全体の文化の下に、民族の文化があって、民族の下にはさらに細かいグループ(クラン)の文化があって・・、Iの言葉をそのまま借りると、文化の下に文化(culture under culture)があるということです。

ちなみに、へへ族のように行動で何かを伝えたり、行動から相手の言いたいことを読んだりするのは、日本人のコミュニケーションにも通じるところがあるので、日本人にとってはそんなに特別には感じられないかもしれませんね。