2013年1月17日木曜日

アフリカでの調査に関する本

2013年になりました。年末年始はいかがでしたか。私はクリスマスはブライトンで友人たちと過ごし、元日から先週土曜までインドに行ってきました。クリスマスもインド旅行も、勉強から離れてリフレッシュできました。今年は博士論文仕上げの年なので、引き続きがんばります。

インドについては近々書くことにして、休暇中に読んだ本をご紹介します。Susan Thomsonらが編集した『Emotional and Ethical Challenges for Field Research in Africa: The Story Behind the Findings(仮訳:アフリカでの現地調査における感情面と倫理面での課題:研究成果の裏にあるストーリー)』という昨年出版された本です。

コンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジ、北部ウガンダで、紛争や虐殺に関する調査を行った著者たちが、現地で直面したさまざまな問題について率直に書いています。調査内容が政治的にセンシティブであったり、危険と隣り合わせであることから常に緊張感があったり、どこまで踏み込んでいくかという問題が出てきたりします。著書のひとりは、現地政府から調査を監視され、インタビューした囚人たちのリストを提出するように言われますが、インタビュー相手に約束した守秘義務(confidentiality)を重んじて提出しなかったために、調査許可を無効にされていまいます。

また、紛争や虐殺の影響を受けている人たちから話を聞くため、さまざまな倫理的なジレンマに陥ります。たとえば、ルワンダで調査を行ったリサーチャーは、調査ノートに「時々、ここで自分が何をしているのかわからなくなる」と書いています。自分のキャリアのために、現地の人たちから情報を聞き出すことに疑問を感じ、自分が人の苦しみや悲しみの一覧表を作るだけの災害観光客(disaster tourist)になったような気がする、と。でも、このリサーチャーも他の著者も苦悩しながら、それぞれの課題に対処していく様子も書かれています。

私が自分の経験にも照らして、特に興味深いと思ったのは、インタビュー相手の嘘について書かれた第10章です。ブルンジで調査をおこなった著者は、嘘をつかれたということは相手の信頼を得られなかった証だから、調査がうまくいかなかったともとれるが、むしろ、なぜ相手が嘘をついたのかという理由を探して推察することで、現地の人々の置かれた状況がよりよく理解できると述べています。

タンザニアは紛争国ではありませんが、私の場合インタビュー相手が政治家だったこともあり、話が誇張されることがありました(政治家でなくても誰でも相手によって話を変えるということはありますが)。政治家と一緒に行動していて、彼らが相手と状況によって、どのくらい話を変えるか少しずつ見えてくるようになりました。インタビューで聞いた話のうち、どの部分をどのくらい引き算してとらえるかは、フォーマルなインタビューを1回行うだけではなかなかわかりません。フォーマルとインフォーマルの組み合わせと、場数が大事になってくるのだと思います。

2 件のコメント:

あや さんのコメント...

お久しぶりです!
明けましておめでとうございます。
お元気ですか?

指導教官が編者の一人なので、
私もこの本読みました。
An Ansomsの章が、私がルワンダで思ったことと同様のことを書いていて、心に残りました。

お互い、博論がんばりましょうー。

Machiko さんのコメント...

あやさん、お久しぶりです!今年もどうぞよろしくお願いします。コメントどうも有り難うございました。この本を読みながら、あやさんの調査もこういう感じだったのかなぁと思っていました。An Ansomsの章、disaster touristの葛藤も含め、私も印象に残っています。博士論文がんばりましょう!