2014年9月10日水曜日

卒業

ご無沙汰しております。前回書いてから3か月経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。

私は7月に両親とブライトン・ドームで行われた大学の卒業式に出席しました。サセックス大学の卒業式では、学部生と修士課程の学生は黒い角帽とガウンを着用しますが、博士課程の学生は黒いベレー帽をかぶり、赤と青のガウンを着ます。私は卒業式でガウンを着るのは3度目でしたが、ベレー帽と赤と青の派手なガウンは初めてで新鮮でした。卒業式の後にIDSで行われたレセプションには、昨年秋にIDSからロンドン・キングス・カレッジに異動した指導教官や、Vivaの試験官を務めた先生が来てくれました。

また、せっかく両親がイギリスまで来てくれたので、ロンドンとパリの観光をしました。両親はこれまで私が住んでいたワシントンDC、ニューヨーク、ダルエスサラームに一人ずつ別々に来ましたが、両親2人同時に海外に来るのは初めてで、3人で観光名所をまわり、街を散策するのはとても楽しかったです。イギリス留学最後の良い思い出になりました。

さて、サセックス大学を卒業し、ブライトンを離れましたので、このブライトン・ジャーナルを今回で終わりにしたいと思います。私はずっと一時的にタンザニアや日本に行きつつ、ブライトンに戻る生活を続けていたので、もうブライトンに戻る必要がないという実感がないのですが・・。まぁもしかしたら将来何かの縁があって、またブライトンに住むこともあるかもしれません。

これまでブライトン・ジャーナルを読んでくださり、コメントを書いてくださって、どうも有り難うございました。このブログを書くことは私にとって日本語で頭を整理する良い機会でしたし、以前の投稿に書きましたが、博士課程という長いトンネルの中を進んでいく上での支えにもなりました。

ブライトン・ジャーナルは今回で終わりますが、来月から来年2月までタンザニアのダルエスサラーム大学政治行政学部で教える機会をいただきましたので、来月からまたダル・ジャーナルの方に書いていきたいと思います。

2年半前にタンザニアで現地調査を終えてからまた行きたいといつも思いつつ、博士論文を書き終えるまでタンザニアには行ってはいけないと自分で自分に禁止令を出していたので、ずいぶん時間が経ってしまいました。その間ブライトンでスワヒリ語レッスンを再開したりしながら、タンザニアを再訪する日を心待ちにしていました。

ダルエスサラーム大学の先生方には博士課程の現地調査中に大変お世話になりましたので、今回少しでも恩返しができたらと思っています。また、長期的には、研究や教育を通じてタンザニアの発展に貢献していきたいと思っていますので、この貴重な機会を有意義に過ごしたいです。

2014年6月2日月曜日

スワヒリ語

1月に博士論文を提出した後、1年近く休んでいたスワヒリ語マンツーマンレッスンを再開しました。以前ブログに書いた教育学部の博士課程にいるタンザニア人の友人Rが、タンザニアでの調査を終えてブライトンに戻っていたので、またクラスをお願いしました。今回は毎週2~3ページの作文の宿題があって、クラスでRにわからない単語を教えてもらい、文法の間違いを直してもらいました。作文のテーマは私がタンザニアで行った調査に関するものが多く、Rも博士論文を書いている最中なので、お互いの研究についていろいろ話せたのが良かったです。Rとの授業は先月初旬に終わりましたが、毎週コツコツ書いた作文をまとめると、タンザニアの調査記録のようになりました。

私はブライトンで5人のタンザニア人からスワヒリ語を習いましたが、みんな賢くて勤勉で優しくて、どの先生との授業も良い思い出です。スワヒリ語ではなく、英語が中心のアフリカの国を調査国に選んでいたら、新しい言語を習う必要はなくて楽だったのにと思ったこともありますが、スワヒリ語を通じてタンザニアのことがより深く理解できたし、ブライトンでもスワヒリ語を通じてタンザニアの友人ができて本当に良かったと思っています。

2014年4月27日日曜日

Vivaの準備

私のまわりの博士課程の学生はVivaの準備として想定問答を考えたり、指導教官などに試験官役を務めてもらって模擬Viva(mock Vivaと呼んでいます)をやったりします。Vivaでよく聞かれる質問はインターネットなどに載っています(例えば私が友人から薦められたサイトはこちら)。

私は1月の論文提出後、しばらく他のことをして気分転換して、2~3月に大学がPhDの学生向けに開いている研究発表の準備の仕方についてのワークショップとVivaの準備の仕方についてのワークショップに参加しました。発表についてのワークショップに出たのは、指導教官の提案で、Viva準備として、博士論文について発表することにしたからです。指導教官は昨年IDSからロンドンのキングスカレッジ(King's College)に異動されたのですが、キングスカレッジの博士課程の学生の勉強会で発表する機会を作ってくれました。また、Vivaの一週間前に、サセックス大学アフリカ・センターのPhDセミナーでも発表しました。これらの発表は、論文の要点をまとめて効果的にメッセージを伝える上での練習となり、個人的には模擬Vivaより良かったような気がします。

発表のワークショップの講師の方が、TEDやTEDxの講演を見ると、発表の構成や話し方、パワーポイントの使い方などについて学べるからいいとおっしゃっていたので、久しぶりにいろいろなTEDを見てみました(TEDについては、2011年11月にダルエスサラームのTEDxを見に行った時のことを以前dar journalに書きました)。欧米で開かれているTEDは、大企業のCEOや起業家が話すことが多く、学術的な研究発表とは少し違うような印象を持っていましたが、今回見てみたら必ずしもそうではなく、研究発表の準備をする上で参考になるものや、Vivaの準備にも役立ちそうなものもありました。

なかでも以下の2つのTEDの講演が気に入って、Vivaまでくり返し見ました。いずれも講演者の話し方にそれぞれのスタイルがあるので、発表の仕方という点からも参考になります。
'The Skill of Self Confidence: Dr. Ivan Joseph at TEDxRyersonU'
'Amy Cuddy: Your body language shapes who you are'

因みに、私は2つ目のTEDで紹介されているテクニックをViva直前に実践しました。その効果もあってリラックスしてVivaに臨めたのかもしれません。

2014年4月6日日曜日

Viva

先月、博士課程最後の口頭試験(Viva、バイバと読みます)を受け、無事「少しの修正(minor corrections)」で合格しました。博士課程の口答試験は国によって異なりますが、イギリスでは学生の所属する学部の先生が務める内部試験官と、他の大学の先生が務める外部試験官の2名のみによって行われます。サセックス大学では、Vivaの結果は「修正なしの合格」「少しの修正(minor corrections)」「大幅な修正(major corrections)」「不合格」の4段階となっています(イギリスのVivaの一般的な情報はこちらに、結果についてはこちらに載っています)。

サセックス大学では、約1割の学生が「修正なしの合格」、約8割が「少しの修正」、約1割が「大幅な修正」で、数年に1度「不合格」の人が出るそうです。「少しの修正」は、数時間で終わる程度の修正から最長6か月かかる修正までと幅が大きく、多くの人がこの結果になりますので、「大幅な修正」にならないようにというプレッシャーが大きい気がします。

私の内部試験官は、1年目の研究概要の発表(Research Outline Seminar)と3年目の進捗状況の発表(Work-in-Progress Seminar)に来て、非常に有意義なコメントをしてくださった先生で、外部試験官はオックスフォード大学の先生が務めてくださいました。私はこれまでお二人が書いたものを読んだり、授業や講演を聞いたりしてきて、お二人の鋭い分析が好きで、心から尊敬する方々なので、論文を読んで議論してもらえたことが本当に有難かったです。

Vivaは約2時間でしたが、最初から和やかな雰囲気でした。試験官のお二人は私の論文を改善するために知恵を貸してくださるような感じで、私もリラックスして論文の強みも弱みも正直に話すことができました。最後に結果が伝えられたあと、外部試験官から「おめでとう!」といって握手していただき、お二人から「論文が明瞭に書かれていて読みやすかった」「と言っていただきました。

たくさんの方に助けていただいて、何とかここまで来ることができました。最後の修正もしっかりやりたいと思います。

2014年2月25日火曜日

エジプトの民主化

今日、ブライトン大学で上映された、『The Square(広場という意味)』というエジプトの民主化革命についてのドキュメンタリー映画を見に行ってきました。タイトルの広場は、2011年からたびたび大規模なデモが行われているカイロ市内のタハリール広場のことを指します。ブライトン大学に着くのが遅れて最初の30分を見逃してしまったのですが、残り1時間でもかなり見応えがありました。

このドキュメンタリーでは、主にタハリール広場の民主化デモに参加する3人の男性を追っているのですが、うち1人はムスリム同胞団のメンバーで、途中からモルシ大統領の退陣を求める他の2人と対立することになってしまい、葛藤します。いろいろなシーンや言葉が印象に残りましたが、特に3人のうちの1人が発砲している戦車に向かって全速力で走っていく映像があって、走り出す直前に顔に布をまいて覚悟を決めている様子も映っているせいか、かなり迫ってくるものがあって印象に残っています。それから、最後にエジプトでデモが文化になりつつあるとして、子どもたちが、デモ隊、軍隊などと役を決めて「デモごっこ」をしているというシーンも興味深かったです。政治や民主主義についていろいろと考えさせられました。

かなり重い内容ではあるのですが、普段、新聞などのメディアからしか知ることのできないエジプトの(今も変わり続ける)政情を、デモに参加する人たちの視点から捉えることができるので、おすすめです。日本でもいつか上映されるといいですね。

2014年2月15日土曜日

勇気

日本は最近よく雪が降るようですね。ブライトンではまだ雪は降っていませんが、晴れと暴風雨が交互に来るような不安定な天気の日が続いています。イギリス南西部では大雨で洪水になっているところもあります。天気が悪いので、せめて部屋の中は明るくしようと思い、ラッパスイセンを買ってきたら、部屋が暖かいので写真のようにすぐに満開になりました。

先日アメリカの詩人マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)の言葉を見つけました。

'Courage is the most important of all the virtues, because without courage you can't practice any other virtue consistently. You can practice any virtue erratically, but nothing consistently without courage.'

「すべての徳のなかで、勇気が一番大切です。勇気がなければ、他の徳を一貫して行うことはできないからです。どの徳も気まぐれに実行することはできるけれど、勇気がなければ一貫して行うことはできません。」という感じでしょうか。

これを読んで、今の私に必要なのはconfidence(自信)よりも、courage(勇気、度胸)なのかもしれないと思いました。まわりの人に批判されても、最良の方法ではないと知っていても、えいやっとやってしまう精神力があったらいいなと思います。

出典:Graham, Stedman (2006) Diversity: Leaders Not Labels, New York: Free Press, p. 224

2014年1月23日木曜日

ソフトウェア②

以前ブログに、私が論文を書く時に使っているソフトウェア、エンドノート(Endnote)とスクリブナー(Scrivener)について書きましたが、その後の報告です。予想通りエンドノートの文献数は増え続けて1,000を超え、自分だけのミニ図書館のようになっています。博士論文で文献を引用する際の使い心地も良かったのですが、唯一、Word上で、エンドノートにリンクされている文献の引用箇所を含む文章を、他の場所にカットアンドペーストで移動するときに、Wordとエンドノートがともにフリーズしてしまうことがよくあって、そのたびに両方とも再起動しなければならなかったのがちょっと面倒でした。エンドノートは新しいバージョンが出ているので、そちらだったら改善されているのかもしれませんが、友人が最新のエンドノードはどこか使いにくいようなことも言っていたので、まぁ今使っているバージョン5でも十分だと思っています。

それから、スクリブナーですが、途中まで使っていたのですが、数ヶ月前にWordに移行しました。移行した一番の理由は、スクリブナーはテキスト形式なので、ほとんど図表を入れることができないこと、フォントや行間などのフォーマットをある程度までしか整えることができないこと、それから(最後の理由はそこまで気になりませんでしたが)指導教官からWordでコメントをもらったときにそれを逐一スクリブナーに書き写さないといけないことでした。図表はWordやExcel、PowerPointなどで別途作成しておいたのですが、例えば指導教官に書き終えた章を送るときなどに、スクリブナーからWord形式で出力して、そこに図表を加えてフォーマットを整えて・・という作業をやらなければならず、それに時間がとられてしまったのです。また私は形から入る、というか、早めにフォーマットを整えておきたい方なので、Word形式で出力したあとに毎回フォーマットを整えなければいけないのはちょっと苦手でした。

博士論文の途中まではスクリブナーを使っていたので、使わなかった場合と比べられないのですが、スクリブナーの利点である、簡単に章と章の間を行ったり来たり文章を移動したりできるというのは良かったと思います。ただ、簡単に行き来できるため、すべての章が書きかけのままの状態が長く続いてしまったような気もします。でもやはり何よりも、図表を入れられないことと、フォーマットをある程度までしか整えることができない、別の言い方とすると、Wordに出力しない限り最終的な形を見ることができないことを不便に感じたので、私の場合は博士論文のような長い文章でもWordの方が向いているのかもしれません。