2014年4月6日日曜日

Viva

先月、博士課程最後の口頭試験(Viva、バイバと読みます)を受け、無事「少しの修正(minor corrections)」で合格しました。博士課程の口答試験は国によって異なりますが、イギリスでは学生の所属する学部の先生が務める内部試験官と、他の大学の先生が務める外部試験官の2名のみによって行われます。サセックス大学では、Vivaの結果は「修正なしの合格」「少しの修正(minor corrections)」「大幅な修正(major corrections)」「不合格」の4段階となっています(イギリスのVivaの一般的な情報はこちらに、結果についてはこちらに載っています)。

サセックス大学では、約1割の学生が「修正なしの合格」、約8割が「少しの修正」、約1割が「大幅な修正」で、数年に1度「不合格」の人が出るそうです。「少しの修正」は、数時間で終わる程度の修正から最長6か月かかる修正までと幅が大きく、多くの人がこの結果になりますので、「大幅な修正」にならないようにというプレッシャーが大きい気がします。

私の内部試験官は、1年目の研究概要の発表(Research Outline Seminar)と3年目の進捗状況の発表(Work-in-Progress Seminar)に来て、非常に有意義なコメントをしてくださった先生で、外部試験官はオックスフォード大学の先生が務めてくださいました。私はこれまでお二人が書いたものを読んだり、授業や講演を聞いたりしてきて、お二人の鋭い分析が好きで、心から尊敬する方々なので、論文を読んで議論してもらえたことが本当に有難かったです。

Vivaは約2時間でしたが、最初から和やかな雰囲気でした。試験官のお二人は私の論文を改善するために知恵を貸してくださるような感じで、私もリラックスして論文の強みも弱みも正直に話すことができました。最後に結果が伝えられたあと、外部試験官から「おめでとう!」といって握手していただき、お二人から「論文が明瞭に書かれていて読みやすかった」「と言っていただきました。

たくさんの方に助けていただいて、何とかここまで来ることができました。最後の修正もしっかりやりたいと思います。

2014年2月25日火曜日

エジプトの民主化

今日、ブライトン大学で上映された、『The Square(広場という意味)』というエジプトの民主化革命についてのドキュメンタリー映画を見に行ってきました。タイトルの広場は、2011年からたびたび大規模なデモが行われているカイロ市内のタハリール広場のことを指します。ブライトン大学に着くのが遅れて最初の30分を見逃してしまったのですが、残り1時間でもかなり見応えがありました。

このドキュメンタリーでは、主にタハリール広場の民主化デモに参加する3人の男性を追っているのですが、うち1人はムスリム同胞団のメンバーで、途中からモルシ大統領の退陣を求める他の2人と対立することになってしまい、葛藤します。いろいろなシーンや言葉が印象に残りましたが、特に3人のうちの1人が発砲している戦車に向かって全速力で走っていく映像があって、走り出す直前に顔に布をまいて覚悟を決めている様子も映っているせいか、かなり迫ってくるものがあって印象に残っています。それから、最後にエジプトでデモが文化になりつつあるとして、子どもたちが、デモ隊、軍隊などと役を決めて「デモごっこ」をしているというシーンも興味深かったです。政治や民主主義についていろいろと考えさせられました。

かなり重い内容ではあるのですが、普段、新聞などのメディアからしか知ることのできないエジプトの(今も変わり続ける)政情を、デモに参加する人たちの視点から捉えることができるので、おすすめです。日本でもいつか上映されるといいですね。

2014年2月15日土曜日

勇気

日本は最近よく雪が降るようですね。ブライトンではまだ雪は降っていませんが、晴れと暴風雨が交互に来るような不安定な天気の日が続いています。イギリス南西部では大雨で洪水になっているところもあります。天気が悪いので、せめて部屋の中は明るくしようと思い、ラッパスイセンを買ってきたら、部屋が暖かいので写真のようにすぐに満開になりました。

先日アメリカの詩人マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)の言葉を見つけました。

'Courage is the most important of all the virtues, because without courage you can't practice any other virtue consistently. You can practice any virtue erratically, but nothing consistently without courage.'

「すべての徳のなかで、勇気が一番大切です。勇気がなければ、他の徳を一貫して行うことはできないからです。どの徳も気まぐれに実行することはできるけれど、勇気がなければ一貫して行うことはできません。」という感じでしょうか。

これを読んで、今の私に必要なのはconfidence(自信)よりも、courage(勇気、度胸)なのかもしれないと思いました。まわりの人に批判されても、最良の方法ではないと知っていても、えいやっとやってしまう精神力があったらいいなと思います。

出典:Graham, Stedman (2006) Diversity: Leaders Not Labels, New York: Free Press, p. 224

2014年1月23日木曜日

ソフトウェア②

以前ブログに、私が論文を書く時に使っているソフトウェア、エンドノート(Endnote)とスクリブナー(Scrivener)について書きましたが、その後の報告です。予想通りエンドノートの文献数は増え続けて1,000を超え、自分だけのミニ図書館のようになっています。博士論文で文献を引用する際の使い心地も良かったのですが、唯一、Word上で、エンドノートにリンクされている文献の引用箇所を含む文章を、他の場所にカットアンドペーストで移動するときに、Wordとエンドノートがともにフリーズしてしまうことがよくあって、そのたびに両方とも再起動しなければならなかったのがちょっと面倒でした。エンドノートは新しいバージョンが出ているので、そちらだったら改善されているのかもしれませんが、友人が最新のエンドノードはどこか使いにくいようなことも言っていたので、まぁ今使っているバージョン5でも十分だと思っています。

それから、スクリブナーですが、途中まで使っていたのですが、数ヶ月前にWordに移行しました。移行した一番の理由は、スクリブナーはテキスト形式なので、ほとんど図表を入れることができないこと、フォントや行間などのフォーマットをある程度までしか整えることができないこと、それから(最後の理由はそこまで気になりませんでしたが)指導教官からWordでコメントをもらったときにそれを逐一スクリブナーに書き写さないといけないことでした。図表はWordやExcel、PowerPointなどで別途作成しておいたのですが、例えば指導教官に書き終えた章を送るときなどに、スクリブナーからWord形式で出力して、そこに図表を加えてフォーマットを整えて・・という作業をやらなければならず、それに時間がとられてしまったのです。また私は形から入る、というか、早めにフォーマットを整えておきたい方なので、Word形式で出力したあとに毎回フォーマットを整えなければいけないのはちょっと苦手でした。

博士論文の途中まではスクリブナーを使っていたので、使わなかった場合と比べられないのですが、スクリブナーの利点である、簡単に章と章の間を行ったり来たり文章を移動したりできるというのは良かったと思います。ただ、簡単に行き来できるため、すべての章が書きかけのままの状態が長く続いてしまったような気もします。でもやはり何よりも、図表を入れられないことと、フォーマットをある程度までしか整えることができない、別の言い方とすると、Wordに出力しない限り最終的な形を見ることができないことを不便に感じたので、私の場合は博士論文のような長い文章でもWordの方が向いているのかもしれません。

2014年1月21日火曜日

書くこと

それにしても論文を書く過程は長かったです。同じIDSの博士課程に、いったん書く内容が決まったら1週間くらいで一章分のドラフトが書けると言う友人がいてうらやましかったです。内容を固めるのに時間をかけてから、一気に書き上げるそうです。それから、この友人は一番文章がすらすら書けるのは二日酔いの朝だと言っていました。ぼんやりした頭で細かいことは気にせずにシンプルに考えられるので良いそうです。私はお酒を飲まないので実践できませんが・・。

私も以前ブログに書いた通り、じっくり練ってから書こうと思っていましたが、書いてから考えがまとまるということもあるので、とりあえず書いてみようという時もありました。このとりあえず書いてみようの段階で、たくさんエネルギーを使ってしまうと、そのあと不要な部分が出てきた時に捨てられなくなってしまいます。料理で言うと、何をどのくらい調理するかはっきりわからないうちに、はりきって玉ねぎのみじん切りをたくさん作ってしまって、あとから実は少ししかいらなかったという感じです。文章も玉ねぎも使わないことになっても他のものに使えたりするので無駄ではないのですが、切りすぎた玉ねぎのみじん切りが冷蔵庫にたまっていくように、切り取られた文章がフォルダにたまっていきました。

もう今は引退されたIDSのガバナンス・チームの先生とおしゃべりしていたとき、論文を書くスピードが遅いんです・・と言ったら、「私も今でも論文は簡単には書けないわよ。最近も1つ書いたものをすべて没にしたのよ」とおっしゃっていました。没にするという表現は、今も使われているのでしょうか?先生は「I killed the draft(原稿を殺した)」とおっしゃっていたので、印象に残っているのですが。経験を積むことで早くできるようになる部分もある一方で、論文を書くときの苦労はずっとついてまわるんだなと思って、あきらめたというか、ちょっと気が楽になりました。

2014年1月18日土曜日

論文提出

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。いかがお過ごしでしょうか。

今週水曜、博士論文を大学に提出しました。年末年始もずっと論文漬けの毎日で、特に最後の追い込みは脳の持続力勝負のような状況で大変でしたが、やっと終わってほっとしています。3月中旬にViva(ラテン語のViva Vocaの略)と呼ばれる口答試験がありますが、とりあえず少しゆっくりしようと思っていますので、ブログももう少し頻繁に書きたいと思います。

論文の仕上げの最後の段階で、指導教官からコメントをもらって、結論の章を書き直さないといけなかったのですが、その時点で書き直すための自信も気力も残っていませんでした。そこで、自分がこれまで書いてきたものを見たら少しはやる気が出るかなと思って、このブログを見てみました。ブログの内容は論文には関係なく、日々の出来事が中心ですが、一応読んでいる人に何かを伝えようとして書かれています。それで、誰かに読んでもらう文章は、相手にどんなストーリーを伝えたいかが大事なんだということを思い出して、他の章を読まなくても、結論の章だけでひとつのまとまりになるように気持ちをこめて書き直したら、何とか形になり、指導教官からもOKが出ました。ということで、最後はこのブログに励まされて論文を書き終えた感じです。

2013年12月9日月曜日

アメリカ政治学会

前回書いてからまただいぶ時間が経ってしまいましたが、8月、日本の大学での授業が終わった2日後に、シカゴで開かれたアメリカ政治学会(American Political Science Association: APSA、アプサと言います)の年次会合に行きました。APSAは世界最大の政治学会で、今年の会合には6千~7千人が参加していたそうです。

APSAには前から一度行きたいと思っていましたが、大西洋の向こう側で遠いので(イギリス人はイギリスとアメリカの違いについて話すときに大西洋を挟んで・・という表現をたまにするので真似てみました)、様子を見に行くことも難しく、自分も論文を発表しつつ参加することにしました。

今回特にAPSAの年次会合に行きたかったのは、会合中に、昨年IDSを引退した私の指導教官のアフリカ研究50周年記念の夕食会が開かれることになり、先生の現役・元教え子たちが招待されたからでした。先生はサセックス大学に来る前にカリフォルニア大学で長年教鞭をとられていて、これまでに70人以上の博士課程の学生を指導されました。私は一番最後の教え子です。元教え子たちは今はアメリカの様々な大学の先生となっていて、APSAの中のアフリカ政治研究グループの中心的な役割を担っています。先生は教え子たちの発表はすべて聞きに行くとおっしゃり、私の発表にも来てくださいました。

先生を囲んだ夕食会では、元教え子たちが順番に先生との思い出を語り、先生の温かい人柄がよくわかって、改めて指導していただいていることを有難く思いました。ディナーの最後に、先生の隣に座っていた(おそらく先生より年上の)元教え子が、「先生のような人はなかなかいない、特別だよ(He is one of a kind)」とみんなに向かって言うと、先生が「まぁ、他の先生たちもみんな(教え子にとっては)特別な存在でしょう」と謙遜気味に言いました。そのあと、その人が「私たちにとって特別な先生ということだよ(He is 'our' one of a kind)」と言い、全員が静かに頷いて、会がお開きになりました。訳すとちょっと平凡な感じになってしまいますが、「'our' one of a kind」という表現が、アメリカらしくて、教え子が恩師を囲むその場の雰囲気にぴったりで、とても印象に残っています。