2014年9月10日水曜日

卒業

ご無沙汰しております。前回書いてから3か月経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。

私は7月に両親とブライトン・ドームで行われた大学の卒業式に出席しました。サセックス大学の卒業式では、学部生と修士課程の学生は黒い角帽とガウンを着用しますが、博士課程の学生は黒いベレー帽をかぶり、赤と青のガウンを着ます。私は卒業式でガウンを着るのは3度目でしたが、ベレー帽と赤と青の派手なガウンは初めてで新鮮でした。卒業式の後にIDSで行われたレセプションには、昨年秋にIDSからロンドン・キングス・カレッジに異動した指導教官や、Vivaの試験官を務めた先生が来てくれました。

また、せっかく両親がイギリスまで来てくれたので、ロンドンとパリの観光をしました。両親はこれまで私が住んでいたワシントンDC、ニューヨーク、ダルエスサラームに一人ずつ別々に来ましたが、両親2人同時に海外に来るのは初めてで、3人で観光名所をまわり、街を散策するのはとても楽しかったです。イギリス留学最後の良い思い出になりました。

さて、サセックス大学を卒業し、ブライトンを離れましたので、このブライトン・ジャーナルを今回で終わりにしたいと思います。私はずっと一時的にタンザニアや日本に行きつつ、ブライトンに戻る生活を続けていたので、もうブライトンに戻る必要がないという実感がないのですが・・。まぁもしかしたら将来何かの縁があって、またブライトンに住むこともあるかもしれません。

これまでブライトン・ジャーナルを読んでくださり、コメントを書いてくださって、どうも有り難うございました。このブログを書くことは私にとって日本語で頭を整理する良い機会でしたし、以前の投稿に書きましたが、博士課程という長いトンネルの中を進んでいく上での支えにもなりました。

ブライトン・ジャーナルは今回で終わりますが、来月から来年2月までタンザニアのダルエスサラーム大学政治行政学部で教える機会をいただきましたので、来月からまたダル・ジャーナルの方に書いていきたいと思います。

2年半前にタンザニアで現地調査を終えてからまた行きたいといつも思いつつ、博士論文を書き終えるまでタンザニアには行ってはいけないと自分で自分に禁止令を出していたので、ずいぶん時間が経ってしまいました。その間ブライトンでスワヒリ語レッスンを再開したりしながら、タンザニアを再訪する日を心待ちにしていました。

ダルエスサラーム大学の先生方には博士課程の現地調査中に大変お世話になりましたので、今回少しでも恩返しができたらと思っています。また、長期的には、研究や教育を通じてタンザニアの発展に貢献していきたいと思っていますので、この貴重な機会を有意義に過ごしたいです。

2014年6月2日月曜日

スワヒリ語

1月に博士論文を提出した後、1年近く休んでいたスワヒリ語マンツーマンレッスンを再開しました。以前ブログに書いた教育学部の博士課程にいるタンザニア人の友人Rが、タンザニアでの調査を終えてブライトンに戻っていたので、またクラスをお願いしました。今回は毎週2~3ページの作文の宿題があって、クラスでRにわからない単語を教えてもらい、文法の間違いを直してもらいました。作文のテーマは私がタンザニアで行った調査に関するものが多く、Rも博士論文を書いている最中なので、お互いの研究についていろいろ話せたのが良かったです。Rとの授業は先月初旬に終わりましたが、毎週コツコツ書いた作文をまとめると、タンザニアの調査記録のようになりました。

私はブライトンで5人のタンザニア人からスワヒリ語を習いましたが、みんな賢くて勤勉で優しくて、どの先生との授業も良い思い出です。スワヒリ語ではなく、英語が中心のアフリカの国を調査国に選んでいたら、新しい言語を習う必要はなくて楽だったのにと思ったこともありますが、スワヒリ語を通じてタンザニアのことがより深く理解できたし、ブライトンでもスワヒリ語を通じてタンザニアの友人ができて本当に良かったと思っています。

2014年4月27日日曜日

Vivaの準備

私のまわりの博士課程の学生はVivaの準備として想定問答を考えたり、指導教官などに試験官役を務めてもらって模擬Viva(mock Vivaと呼んでいます)をやったりします。Vivaでよく聞かれる質問はインターネットなどに載っています(例えば私が友人から薦められたサイトはこちら)。

私は1月の論文提出後、しばらく他のことをして気分転換して、2~3月に大学がPhDの学生向けに開いている研究発表の準備の仕方についてのワークショップとVivaの準備の仕方についてのワークショップに参加しました。発表についてのワークショップに出たのは、指導教官の提案で、Viva準備として、博士論文について発表することにしたからです。指導教官は昨年IDSからロンドンのキングスカレッジ(King's College)に異動されたのですが、キングスカレッジの博士課程の学生の勉強会で発表する機会を作ってくれました。また、Vivaの一週間前に、サセックス大学アフリカ・センターのPhDセミナーでも発表しました。これらの発表は、論文の要点をまとめて効果的にメッセージを伝える上での練習となり、個人的には模擬Vivaより良かったような気がします。

発表のワークショップの講師の方が、TEDやTEDxの講演を見ると、発表の構成や話し方、パワーポイントの使い方などについて学べるからいいとおっしゃっていたので、久しぶりにいろいろなTEDを見てみました(TEDについては、2011年11月にダルエスサラームのTEDxを見に行った時のことを以前dar journalに書きました)。欧米で開かれているTEDは、大企業のCEOや起業家が話すことが多く、学術的な研究発表とは少し違うような印象を持っていましたが、今回見てみたら必ずしもそうではなく、研究発表の準備をする上で参考になるものや、Vivaの準備にも役立ちそうなものもありました。

なかでも以下の2つのTEDの講演が気に入って、Vivaまでくり返し見ました。いずれも講演者の話し方にそれぞれのスタイルがあるので、発表の仕方という点からも参考になります。
'The Skill of Self Confidence: Dr. Ivan Joseph at TEDxRyersonU'
'Amy Cuddy: Your body language shapes who you are'

因みに、私は2つ目のTEDで紹介されているテクニックをViva直前に実践しました。その効果もあってリラックスしてVivaに臨めたのかもしれません。

2014年4月6日日曜日

Viva

先月、博士課程最後の口頭試験(Viva、バイバと読みます)を受け、無事「少しの修正(minor corrections)」で合格しました。博士課程の口答試験は国によって異なりますが、イギリスでは学生の所属する学部の先生が務める内部試験官と、他の大学の先生が務める外部試験官の2名のみによって行われます。サセックス大学では、Vivaの結果は「修正なしの合格」「少しの修正(minor corrections)」「大幅な修正(major corrections)」「不合格」の4段階となっています(イギリスのVivaの一般的な情報はこちらに、結果についてはこちらに載っています)。

サセックス大学では、約1割の学生が「修正なしの合格」、約8割が「少しの修正」、約1割が「大幅な修正」で、数年に1度「不合格」の人が出るそうです。「少しの修正」は、数時間で終わる程度の修正から最長6か月かかる修正までと幅が大きく、多くの人がこの結果になりますので、「大幅な修正」にならないようにというプレッシャーが大きい気がします。

私の内部試験官は、1年目の研究概要の発表(Research Outline Seminar)と3年目の進捗状況の発表(Work-in-Progress Seminar)に来て、非常に有意義なコメントをしてくださった先生で、外部試験官はオックスフォード大学の先生が務めてくださいました。私はこれまでお二人が書いたものを読んだり、授業や講演を聞いたりしてきて、お二人の鋭い分析が好きで、心から尊敬する方々なので、論文を読んで議論してもらえたことが本当に有難かったです。

Vivaは約2時間でしたが、最初から和やかな雰囲気でした。試験官のお二人は私の論文を改善するために知恵を貸してくださるような感じで、私もリラックスして論文の強みも弱みも正直に話すことができました。最後に結果が伝えられたあと、外部試験官から「おめでとう!」といって握手していただき、お二人から「論文が明瞭に書かれていて読みやすかった」「と言っていただきました。

たくさんの方に助けていただいて、何とかここまで来ることができました。最後の修正もしっかりやりたいと思います。

2014年2月25日火曜日

エジプトの民主化

今日、ブライトン大学で上映された、『The Square(広場という意味)』というエジプトの民主化革命についてのドキュメンタリー映画を見に行ってきました。タイトルの広場は、2011年からたびたび大規模なデモが行われているカイロ市内のタハリール広場のことを指します。ブライトン大学に着くのが遅れて最初の30分を見逃してしまったのですが、残り1時間でもかなり見応えがありました。

このドキュメンタリーでは、主にタハリール広場の民主化デモに参加する3人の男性を追っているのですが、うち1人はムスリム同胞団のメンバーで、途中からモルシ大統領の退陣を求める他の2人と対立することになってしまい、葛藤します。いろいろなシーンや言葉が印象に残りましたが、特に3人のうちの1人が発砲している戦車に向かって全速力で走っていく映像があって、走り出す直前に顔に布をまいて覚悟を決めている様子も映っているせいか、かなり迫ってくるものがあって印象に残っています。それから、最後にエジプトでデモが文化になりつつあるとして、子どもたちが、デモ隊、軍隊などと役を決めて「デモごっこ」をしているというシーンも興味深かったです。政治や民主主義についていろいろと考えさせられました。

かなり重い内容ではあるのですが、普段、新聞などのメディアからしか知ることのできないエジプトの(今も変わり続ける)政情を、デモに参加する人たちの視点から捉えることができるので、おすすめです。日本でもいつか上映されるといいですね。

2014年2月15日土曜日

勇気

日本は最近よく雪が降るようですね。ブライトンではまだ雪は降っていませんが、晴れと暴風雨が交互に来るような不安定な天気の日が続いています。イギリス南西部では大雨で洪水になっているところもあります。天気が悪いので、せめて部屋の中は明るくしようと思い、ラッパスイセンを買ってきたら、部屋が暖かいので写真のようにすぐに満開になりました。

先日アメリカの詩人マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)の言葉を見つけました。

'Courage is the most important of all the virtues, because without courage you can't practice any other virtue consistently. You can practice any virtue erratically, but nothing consistently without courage.'

「すべての徳のなかで、勇気が一番大切です。勇気がなければ、他の徳を一貫して行うことはできないからです。どの徳も気まぐれに実行することはできるけれど、勇気がなければ一貫して行うことはできません。」という感じでしょうか。

これを読んで、今の私に必要なのはconfidence(自信)よりも、courage(勇気、度胸)なのかもしれないと思いました。まわりの人に批判されても、最良の方法ではないと知っていても、えいやっとやってしまう精神力があったらいいなと思います。

出典:Graham, Stedman (2006) Diversity: Leaders Not Labels, New York: Free Press, p. 224

2014年1月23日木曜日

ソフトウェア②

以前ブログに、私が論文を書く時に使っているソフトウェア、エンドノート(Endnote)とスクリブナー(Scrivener)について書きましたが、その後の報告です。予想通りエンドノートの文献数は増え続けて1,000を超え、自分だけのミニ図書館のようになっています。博士論文で文献を引用する際の使い心地も良かったのですが、唯一、Word上で、エンドノートにリンクされている文献の引用箇所を含む文章を、他の場所にカットアンドペーストで移動するときに、Wordとエンドノートがともにフリーズしてしまうことがよくあって、そのたびに両方とも再起動しなければならなかったのがちょっと面倒でした。エンドノートは新しいバージョンが出ているので、そちらだったら改善されているのかもしれませんが、友人が最新のエンドノードはどこか使いにくいようなことも言っていたので、まぁ今使っているバージョン5でも十分だと思っています。

それから、スクリブナーですが、途中まで使っていたのですが、数ヶ月前にWordに移行しました。移行した一番の理由は、スクリブナーはテキスト形式なので、ほとんど図表を入れることができないこと、フォントや行間などのフォーマットをある程度までしか整えることができないこと、それから(最後の理由はそこまで気になりませんでしたが)指導教官からWordでコメントをもらったときにそれを逐一スクリブナーに書き写さないといけないことでした。図表はWordやExcel、PowerPointなどで別途作成しておいたのですが、例えば指導教官に書き終えた章を送るときなどに、スクリブナーからWord形式で出力して、そこに図表を加えてフォーマットを整えて・・という作業をやらなければならず、それに時間がとられてしまったのです。また私は形から入る、というか、早めにフォーマットを整えておきたい方なので、Word形式で出力したあとに毎回フォーマットを整えなければいけないのはちょっと苦手でした。

博士論文の途中まではスクリブナーを使っていたので、使わなかった場合と比べられないのですが、スクリブナーの利点である、簡単に章と章の間を行ったり来たり文章を移動したりできるというのは良かったと思います。ただ、簡単に行き来できるため、すべての章が書きかけのままの状態が長く続いてしまったような気もします。でもやはり何よりも、図表を入れられないことと、フォーマットをある程度までしか整えることができない、別の言い方とすると、Wordに出力しない限り最終的な形を見ることができないことを不便に感じたので、私の場合は博士論文のような長い文章でもWordの方が向いているのかもしれません。

2014年1月21日火曜日

書くこと

それにしても論文を書く過程は長かったです。同じIDSの博士課程に、いったん書く内容が決まったら1週間くらいで一章分のドラフトが書けると言う友人がいてうらやましかったです。内容を固めるのに時間をかけてから、一気に書き上げるそうです。それから、この友人は一番文章がすらすら書けるのは二日酔いの朝だと言っていました。ぼんやりした頭で細かいことは気にせずにシンプルに考えられるので良いそうです。私はお酒を飲まないので実践できませんが・・。

私も以前ブログに書いた通り、じっくり練ってから書こうと思っていましたが、書いてから考えがまとまるということもあるので、とりあえず書いてみようという時もありました。このとりあえず書いてみようの段階で、たくさんエネルギーを使ってしまうと、そのあと不要な部分が出てきた時に捨てられなくなってしまいます。料理で言うと、何をどのくらい調理するかはっきりわからないうちに、はりきって玉ねぎのみじん切りをたくさん作ってしまって、あとから実は少ししかいらなかったという感じです。文章も玉ねぎも使わないことになっても他のものに使えたりするので無駄ではないのですが、切りすぎた玉ねぎのみじん切りが冷蔵庫にたまっていくように、切り取られた文章がフォルダにたまっていきました。

もう今は引退されたIDSのガバナンス・チームの先生とおしゃべりしていたとき、論文を書くスピードが遅いんです・・と言ったら、「私も今でも論文は簡単には書けないわよ。最近も1つ書いたものをすべて没にしたのよ」とおっしゃっていました。没にするという表現は、今も使われているのでしょうか?先生は「I killed the draft(原稿を殺した)」とおっしゃっていたので、印象に残っているのですが。経験を積むことで早くできるようになる部分もある一方で、論文を書くときの苦労はずっとついてまわるんだなと思って、あきらめたというか、ちょっと気が楽になりました。

2014年1月18日土曜日

論文提出

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。いかがお過ごしでしょうか。

今週水曜、博士論文を大学に提出しました。年末年始もずっと論文漬けの毎日で、特に最後の追い込みは脳の持続力勝負のような状況で大変でしたが、やっと終わってほっとしています。3月中旬にViva(ラテン語のViva Vocaの略)と呼ばれる口答試験がありますが、とりあえず少しゆっくりしようと思っていますので、ブログももう少し頻繁に書きたいと思います。

論文の仕上げの最後の段階で、指導教官からコメントをもらって、結論の章を書き直さないといけなかったのですが、その時点で書き直すための自信も気力も残っていませんでした。そこで、自分がこれまで書いてきたものを見たら少しはやる気が出るかなと思って、このブログを見てみました。ブログの内容は論文には関係なく、日々の出来事が中心ですが、一応読んでいる人に何かを伝えようとして書かれています。それで、誰かに読んでもらう文章は、相手にどんなストーリーを伝えたいかが大事なんだということを思い出して、他の章を読まなくても、結論の章だけでひとつのまとまりになるように気持ちをこめて書き直したら、何とか形になり、指導教官からもOKが出ました。ということで、最後はこのブログに励まされて論文を書き終えた感じです。

2013年12月9日月曜日

アメリカ政治学会

前回書いてからまただいぶ時間が経ってしまいましたが、8月、日本の大学での授業が終わった2日後に、シカゴで開かれたアメリカ政治学会(American Political Science Association: APSA、アプサと言います)の年次会合に行きました。APSAは世界最大の政治学会で、今年の会合には6千~7千人が参加していたそうです。

APSAには前から一度行きたいと思っていましたが、大西洋の向こう側で遠いので(イギリス人はイギリスとアメリカの違いについて話すときに大西洋を挟んで・・という表現をたまにするので真似てみました)、様子を見に行くことも難しく、自分も論文を発表しつつ参加することにしました。

今回特にAPSAの年次会合に行きたかったのは、会合中に、昨年IDSを引退した私の指導教官のアフリカ研究50周年記念の夕食会が開かれることになり、先生の現役・元教え子たちが招待されたからでした。先生はサセックス大学に来る前にカリフォルニア大学で長年教鞭をとられていて、これまでに70人以上の博士課程の学生を指導されました。私は一番最後の教え子です。元教え子たちは今はアメリカの様々な大学の先生となっていて、APSAの中のアフリカ政治研究グループの中心的な役割を担っています。先生は教え子たちの発表はすべて聞きに行くとおっしゃり、私の発表にも来てくださいました。

先生を囲んだ夕食会では、元教え子たちが順番に先生との思い出を語り、先生の温かい人柄がよくわかって、改めて指導していただいていることを有難く思いました。ディナーの最後に、先生の隣に座っていた(おそらく先生より年上の)元教え子が、「先生のような人はなかなかいない、特別だよ(He is one of a kind)」とみんなに向かって言うと、先生が「まぁ、他の先生たちもみんな(教え子にとっては)特別な存在でしょう」と謙遜気味に言いました。そのあと、その人が「私たちにとって特別な先生ということだよ(He is 'our' one of a kind)」と言い、全員が静かに頷いて、会がお開きになりました。訳すとちょっと平凡な感じになってしまいますが、「'our' one of a kind」という表現が、アメリカらしくて、教え子が恩師を囲むその場の雰囲気にぴったりで、とても印象に残っています。

2013年9月26日木曜日

教えること

前回書いてから3か月経ってしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は8月に日本の大学でアフリカ政治の授業を教える機会をいただきました。アフリカについて単発でお話しすることは今までもありましたが、大学で連続した講義を行うのは初めてでした。受講生のみなさんはアフリカに様々な角度から関心をもっていて、アフリカに行ったことのある方、これから行く予定の方もいて、熱心に話を聞いてくださって、とても貴重な経験となりました。

授業の準備をしながら、大学で教えることについて考えました。

私は大学の学部は、知(knowledge)を消費(consume)するトレーニングの場で、大学院(特に博士課程)は、知を生産(produce)するトレーニングの場だと考えています。学部と大学院の違いは、知のconsumerからproducerに変わることです。学部では既存の知識や議論を幅広く理解することが求められますが、博士課程では、そういった既存の知を土台にして、独自の研究を行い、その結果を新しい知として生み出すことが求められます。他の誰かがすでにやったのと同じ研究を行ってもあまり価値がありません。博士号は、専門分野で新しい知を生み出す能力を身につけたことの証明と言ってもよいかもしれません。修士課程はプログラムや人によって異なりますが、この2つの中間というイメージです。

それでは、大学で教えるというのはどういうことだろう?と考えてみて、知識を再生産(reproduce)することかなと思いました。大学で教える内容は、それぞれの分野で構築された知識や議論です。だから、研究しているときのような先へ先へ・・という意識ではなくて、立ち止まってこれまでに蓄積されたものを幅広く見直さなければいけません。そして、知識を解釈したり体系づけたりする際には工夫が必要になりますし、内容についても伝え方についても研究とは違ったオリジナリティを発揮することができます。あたり前のことのようですが、私はすっかり研究マインドになっていたので、意識の切り替えが必要でした。

それから、教える際に何を目標にしたらいいかな?とも考えて、これについてはベトナムの禅僧ティック・ナット・ハン師の教えからヒントを得ました。同師は、良い先生は、生徒に対して、生徒の中に先生がいること、そして先生の中にも生徒がいることを教えてくれる人だとおっしゃっています(こちらに記事があります)。

私はこの考え方をもとに、学生の中にアフリカについて学ぶ上での先生を目覚めさせることを目指しました。もともと学生の中に先生の卵があって、それを孵化させるようなイメージです。授業では基礎的な知識を伝えることが第一ですが、それは良い本を読めば大体習得できます。私としては、学生が授業で取り上げた内容に関心や疑問をもって、もっと理解したいと思うようになり、それを理解するための方法がわかるようになったら理想的です。学生の中の先生が目覚めたら、学生はその先生の声を聴きながら、自主的に学んだり判断したりすることができるようになります。

ということで、受講生に書いていただいた授業の感想の中で、授業で紹介された本を読んでみたい、もっとアフリカについて調べてみたい、というコメントが特に嬉しかったです。もともと意識の高い学生さんが多かったということもありますが。同時に工夫すべき点もいろいろわかりました。こちらが学ばせていただいて有難い限りです。

2013年6月22日土曜日

留学

「勉強できる機会なんてそんなに巡ってこないので、死に物狂いでやってみてください。この留学如何で自分の人生が決まるというぐらいの気迫でやってみてください。勉強ははくをつけるためのものではなく、社会に奉仕するためのものですから、大いに頑張ってください。」

5年前にイギリスに留学する時に、前の上司からいただいた言葉です。読むたびに気が引き締まります。ここまできたのだから、あと少しがんばれ!

2013年5月27日月曜日

アフリカ共同訪問

前回ブログを書いてから時間が経ってしまいましたが、ブライトンも長い冬の時代が終わり、春になりました。会話やメールでよく「Enjoy the sunshine !」というフレーズが使われます。ただ、晴れたり曇ったり雨が降ったりと不安定なところがイギリスらしいです。

今月中旬、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁と潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が、アフリカの大湖地域を共同訪問されました。その写真を見て、世銀と国連のトップがともに韓国人・韓国系というのはすごいなと改めて思いました。そして、たまたまそういう写真が多いのかもしれませんが、お二人の仲の良さそうな雰囲気が出ています。お二人だけでお話しされる時は韓国語なのかな。。

以下のサイトに写真が載っています。
'Jim Kim Visits Africa’s Great Lakes region'


2013年4月6日土曜日

貧しいけれど幸せ?

ブライトンは4月に入ってからも、くもりと雨と雪の寒い日が続いています。白い魔女に統治されて何百年も冬の時代の続いたナルニア国みたいだと思って、まわりの人たちに「イギリスにはもう春は来ないんだと思う」と言っています。今日は久しぶりに晴れているので、少し春が近づいているような気もしますが。

さて、世銀のブログに「貧しいけれど幸せ?(Poor but happy?)」という記事が掲載されているので、ご紹介します。途上国の人たちは貧しいけれど、実は先進国の人たちより幸せなのではないか?という時々出てくる問いについての記事です。例えばブータンは幸福度が高い国として知られていますが、サハラ以南アフリカの国々はどうでしょうか。

この記事の図表2(Figure 2)によると、アフリカの国の間にもばらつきがあるようです。この図では、縦の軸が幸せの度合い、横の軸は貧しさの度合いを示しています。左上にあるのが貧しい人が少なくて、幸福度の高い国々。右下にあるのが、貧しい人が多くて、幸福度の低い国々。平均すると、若干、貧しさと幸せには負の相関関係(裕福な方が幸せ)がありますが、これに当てはまらない国もたくさんあります。例えばマラウィは貧しい人が多いけれど、アフリカで一番幸せな国です。逆にカメルーンは貧しい人が少ないのに、幸せの度合いは低いです。

マラウィと言えば、昨日IDSで英国国際開発省(DFID)のガバナンス・アドバイザーによる講演がありましたが、その際にイギリスの援助と外交政策の関連性の話になって、援助が外交戦略と直接関係している国の事例としてパキスタン、その逆の事例としてマラウィが挙げられました。

DFIDは3年前に援助のレビューを行い、重点支援国を28か国に絞りましたが、その中にもアフガニスタンやパキスタンのように対テロリズムなどの外交や経済的な国益と結びついている国々と、マラウィなど、外交・経済的な利益よりも、貧困削減の成果を出すことを目的にしている国々があります(もちろん広くとらえれば、貧困削減も外交目的に入りますが)。

また、同アドバイザーが、DFIDは援助の効果を向上させるために、援助の評価に被援助国の一般の人たちの意見を取り入れるようになってきたとも言っていました。それを思い出して、もともと貧しくても幸福度が高い国だったら、人々は援助の効果についてもポジティブなんじゃないかな、だからマラウィも重点国にしたのかなぁと勘ぐって、他のアフリカの重点国17カ国も見てみたところ、確かに幸福度が高めの国が多いですが、必ずしもそうでもありません。むしろ単純に英語圏アフリカの多くの国が、イギリスの重点支援国になっているという気もします。

重点国の中で特に幸福度が低い国があります。タンザニアです。タンザニアは貧しい人が多くて、幸福度がとても低いです。マラウィとタンザニアは隣接していて、貧しいという点では共通しているのに、幸せの度合いが大きく違うので、興味深いです。

2013年3月28日木曜日

発表

今月は、タンザニア研究者ネットワーク英国開発学勉強会(IDDP)で発表する機会がありました。それぞれ発表時間は1時間で、どちらも新しくパワーポイントを作ったので準備に時間がかかりましたが、とても貴重な経験になりました。研究については、これまでダルエスサラーム大学エジンバラ大学IDS、今回のタンザニア研究者ネットワークで発表してきたので、だいぶ発表することに慣れました。何事も経験を積むことが大事ですね。
 
IDDPの勉強会はイギリスの主に修士課程に留学している日本人が対象です。私の研究だけだとマニアックなので、もう少しテーマを広げて、IDSのガバナンスと開発学修士課程の授業のような感じの内容にしてみました。アカウンタビリティの観点から、開発援助とタンザニア政治と課税について考えるということで、3つのトピックを取り上げたので、それぞれ浅くなってしまいましたが、アカウンタビリティ入門という目的は果たせたかなと思います。

指導教官からは「発表はもう十分経験を積んだから、論文に集中しなさい」と言われています。実際、博士論文は当初の予定よりだいぶ遅れているので、これからは論文執筆に集中しないといけません。今日スケジュールを見直しましたが、4月は勝負の月になりそうです。どうかいいブレイクスルーがありますように・・。

写真は、今月中旬に雪が降ったとき、一緒に住んでいるGが近所のクイーンズ・パーク(Queens Park)で撮ったものです。先週土曜のIDDP勉強会のときも雪が降りましたし、イギリスはまだまだ冬なのです。

2013年3月4日月曜日

扉と鍵

明後日、ロンドン大学で研究発表するので、最近はその準備をしています。その一環でタンザニア調査中のノートを読み返していて、スワヒリ語のことわざを見つけました。「すべての扉には、それぞれ合う鍵がある(Kila mlango kwa ufunguo wake)(英訳すると、Every door has its own key)」。

それぞれの問題には、それぞれの解決方法があるという意味で使うようです。私は調査中、これをインタビューにあてはめて、インタビュー相手から欲しい情報や本音を聞き出すためには、それぞれのインタビュー相手に合う鍵(アプローチの仕方や質問の内容、順番など)があると考えていました。特にエリート・インタビューを行う場合は、これがエッセンスだと思っていました。

実際、インタビュー相手から信頼されて、扉を開くようなインタビューを行うことができたこともありました。「あなただけに言うけれど(between you and me)」という前置きの後に、他の人に言わないような本音が聞けたときなどです。逆に、いろいろな鍵を試してみても、扉が開かなかったインタビューもありました。

今見ても、このことわざ、いいですね。問題解決という意味でも、人生の扉の鍵と考えてもいいですしね。でも、私にとっては人との関係という意味が一番しっくりくるような気がします。インタビューだけではなく、周りの人たち一人一人を大切にすることを思い出させてくれる言葉です。

2013年2月3日日曜日

緊縮財政に反対する女性たち

昨日、ブライトンで行われた'Voices against the Cuts: Women and Austerity'(予算削減に反対する声:女性と緊縮財政)というイベントに参加してきました。イギリスでは、政府が様々な福祉関連予算を削ってきているのですが、その影響を特に受けているのは女性や障害者などであるとのことで、ブライトンと隣町のホーブの女性たちが、Brighton and Hove Women against the Cuts(ブライトンとホーブの政府予算削減に反対する女性たち)というキャンペーンを行っていて、その一環で開かれたイベントです。
 
以前ブログに書いたブライトンから選出された緑の党(Green Party)の国会議員、キャロライン・ルーカス議員がスピーチをするとのことで、私はそれが聞きたくて、このイベントに行ってきました。ルーカス議員のスピーチは一番最後だったので、他の講演者のスピーチ、グループに分かれてのワークショップも含め、計4時間すべて参加しましたが、予算削減の低所得層の人たちへの影響や、女性たちによる地元のキャンペーンの様子が少しわかって勉強になりました。
 
ルーカス議員のスピーチは、さすがに国会議員だけあって、政府を徹底的に批判し、聴衆の心をつかむ良いスピーチでした。ルーカス議員からすると、政府に反対している女性たちは一番話しやすい、支持を得やすいグループだと思いますが、心をこめて真剣に取り組んでいる姿勢が伝わってきました。今後、ルーカス議員の他の活動についても見てみたいと思っています。

2013年1月17日木曜日

アフリカでの調査に関する本

2013年になりました。年末年始はいかがでしたか。私はクリスマスはブライトンで友人たちと過ごし、元日から先週土曜までインドに行ってきました。クリスマスもインド旅行も、勉強から離れてリフレッシュできました。今年は博士論文仕上げの年なので、引き続きがんばります。

インドについては近々書くことにして、休暇中に読んだ本をご紹介します。Susan Thomsonらが編集した『Emotional and Ethical Challenges for Field Research in Africa: The Story Behind the Findings(仮訳:アフリカでの現地調査における感情面と倫理面での課題:研究成果の裏にあるストーリー)』という昨年出版された本です。

コンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジ、北部ウガンダで、紛争や虐殺に関する調査を行った著者たちが、現地で直面したさまざまな問題について率直に書いています。調査内容が政治的にセンシティブであったり、危険と隣り合わせであることから常に緊張感があったり、どこまで踏み込んでいくかという問題が出てきたりします。著書のひとりは、現地政府から調査を監視され、インタビューした囚人たちのリストを提出するように言われますが、インタビュー相手に約束した守秘義務(confidentiality)を重んじて提出しなかったために、調査許可を無効にされていまいます。

また、紛争や虐殺の影響を受けている人たちから話を聞くため、さまざまな倫理的なジレンマに陥ります。たとえば、ルワンダで調査を行ったリサーチャーは、調査ノートに「時々、ここで自分が何をしているのかわからなくなる」と書いています。自分のキャリアのために、現地の人たちから情報を聞き出すことに疑問を感じ、自分が人の苦しみや悲しみの一覧表を作るだけの災害観光客(disaster tourist)になったような気がする、と。でも、このリサーチャーも他の著者も苦悩しながら、それぞれの課題に対処していく様子も書かれています。

私が自分の経験にも照らして、特に興味深いと思ったのは、インタビュー相手の嘘について書かれた第10章です。ブルンジで調査をおこなった著者は、嘘をつかれたということは相手の信頼を得られなかった証だから、調査がうまくいかなかったともとれるが、むしろ、なぜ相手が嘘をついたのかという理由を探して推察することで、現地の人々の置かれた状況がよりよく理解できると述べています。

タンザニアは紛争国ではありませんが、私の場合インタビュー相手が政治家だったこともあり、話が誇張されることがありました(政治家でなくても誰でも相手によって話を変えるということはありますが)。政治家と一緒に行動していて、彼らが相手と状況によって、どのくらい話を変えるか少しずつ見えてくるようになりました。インタビューで聞いた話のうち、どの部分をどのくらい引き算してとらえるかは、フォーマルなインタビューを1回行うだけではなかなかわかりません。フォーマルとインフォーマルの組み合わせと、場数が大事になってくるのだと思います。

2012年12月14日金曜日

スワヒリ語

今年3月にブライトンに戻ってきてからも、タンザニア人留学生と週一回スワヒリ語のマンツーマンレッスンを続けていました。その先生が9月に修士課程を終えてタンザニアに戻った後、別の先生がすぐに見つからず、研究発表が近づいて忙しくなったので、3か月くらいスワヒリ語をほとんど話さずに過ごしました。発表が終わった後、知り合いのタンザニア人の博士課程の学生Rが12月中旬までブライトンにいるということで、お願いして、先週と今週2回会うことができました。

2回目のクラスでは、事前にスワヒリ語の新聞記事がメールで送られてきて、記事が私の研究にどう関係しているか話してもらうので準備してください、という宿題が出ました。Rは私の先日の研究発表にも来てくれたので、私の研究テーマを知っていて、それに関連する記事を選んでくれたので、まさにぴったりの課題でした。

最初に記事の概要を話して、自分の研究に関連付けながら記事の感想を述べて、新しい単語を使って例文を作って・・・という流れでした。最後に習ったことをおさらいするために記事の概要をもう一度説明して、と言われた時には、難しくてできないと駄々をこねましたが、Rに励まされて何とかこなしました。

Rはまもなく調査のためにタンザニアに行くので、また別の友人にスワヒリ語クラスをお願いする予定です。スワヒリ語は研究のために必要というだけではなく、私の一部になっていて、タンザニア人とスワヒリ語で話すと何だかほっとします。ということで、これからも細々とでも続けていきたいと思います。

2012年12月10日月曜日

発表

先週月曜、私の所属する開発学研究所(IDS)で研究発表をしました。IDSの博士課程では、2回発表を行うことになっていて、1回目が1年目に行う研究概要の発表(Research Outline Seminar: ROS)、2回目が研究の進捗状況の発表(Work-in-Progress Seminar: WIP)で、WIPは基本的に3年目の終わりまでに行わなければいけません。私は今月で3年目が終わるので、4年目に移行する前にこの発表をしました。

今回も2年前のROSと同じように、ガバナンス・チームの先生方が来てくださって、博士課程の友人たちも来てくれて、いろいろなコメントをもらって、有意義な時間になりました。その日の夜にガバナンスの修士課程の学生の歓迎会があって、私も参加したのですが、そこでも先生方とおしゃべりしながら、さらにコメントをもらいました。研究テーマを面白いと言ってくれて、一緒に考えてくれること(私の中ではengageという英語がぴったりなのですが)は本当に嬉しいことです。

発表後に自分の机に戻ったら、おめでとうのメッセージとクロワッサンが置いてありました。私が発表用の論文の仕上げで煮詰まって、息抜きにキャンパス内のスーパーに行ったとき、一緒に来てくれた友達がいて、そのときに私が「たまに食べると元気が出るんだよね」と言ってクロワッサンを買ったのを覚えていて、カフェのクロワッサン(スーパーのではなく)を買ってきてくれたのでした。WIP後のごほうび、おいしくいただきました。

WIPが終わって一息つきましたが、締め切りのある課題があと2つ。クリスマスと年末が近づいてきて、のんびりしたいところですが・・、あと少しがんばろう!